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無免許少年による“亀岡暴走事故” 遺族の喪失感消えず

無免許少年による“亀岡暴走事故” 遺族の喪失感消えず

 
「過失運転致死傷罪」と「危険運転致死傷罪」を分ける大きな壁

 6月5日、東名高速道路で萩山嘉久さん(享年45)と妻の友香さん(享年39)、長女・A子さん(15才)、次女・B子さん(11才)の4人を乗せたワンボックスカーは、神奈川県大井町の東名高速道路下り線の追い越し車線に“停まらされて”いた。

 その家族の車に大型のトラックが突っ込み、嘉久さんと友香さんは死亡した。4ヶ月後、一家の車の前に停車して進路を塞いでいたワゴン車を運転していた男性、石橋和歩容疑者(25才)が過失運転致死傷罪で逮捕された。

 当初容疑者は、「あおられたので停車した」という主張をしていたものの、証言やドライブレコーダーなどの調査により事故直前の中井パーキングエリアで嘉久さんに注意された腹いせに1.4kmにわたって進路妨害をしたことが明らかになった。

 悪質な運転妨害を繰り返し、人命を奪った石橋容疑者だが、前述の通り、逮捕容疑は「過失運転致死傷罪」。同罪は「7年以下の懲役または禁錮もしくは100万円以下の罰金」と定められている。これは通常の人身事故と変わらない刑罰で、罰金刑で済む可能性すらある。

 一方で、最高20年の有期刑を科す「危険運転致死傷罪」もある。しかし、これは事故を起こした運転手が酩酊運転、高速度運転、未熟運転、妨害運転等に該当しなければならないと定められている。過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪を分ける大きな壁があると言えるのだ。

 これまで多くの危険運転が裁かれてきた。2006年8月、福岡県福岡市の「海の中道大橋」で、会社員の乗用車が飲酒運転の車に追突されて博多湾に転落。同乗していた3人の子供が亡くなる事故が起きた。当時22才の運転手に同法が適用され、最高裁で懲役20年の刑が確定している。

 他方、危険運転致死傷罪の適用が見送られ、議論を呼んだ事例もある。2012年4月に京都府亀岡市で集団登校中の児童と保護者の列に居眠り運転の軽乗用車が突っ込み、3人が死亡、7人が重軽傷を負った「亀岡暴走事故」がその筆頭である。

 無免許で運転していた当時18才の少年に対する危険運転致死傷罪の適用が争点となり、遺族は無免許運転が同罪の構成要件である「未熟な運転技能」に該当すると主張。だが、京都地検は少年が事故の直前まで長時間運転をしていたことから「一定の運転技能がある」と判断し、同罪の適用を見送った。

 結果、少年は過失致死傷罪で起訴され、懲役5年以上9年以下の不定期刑に。この事故で娘の幸姫さん(当時26才)を亡くし、孫の蒼愛ちゃん(当時6才)も重傷を負った中江美則さん(54才)が怒りの声をあげる。

「少年は無免許運転を日常的に繰り返していたが、それがかえって『運転技術がある』と判断されました。信じられない話です。そもそも無免許運転が危険運転にならないのはおかしい。裁判でも何度もそう訴えましたが聞いてもらえず、本当に悔しい思いをしました」

 事故当時、幸姫さんのお腹には3人目の子供がいた。凄惨な事故は中江さんの人生を大きく変えた。

 

「事故の後、義理の息子と2人の孫は、亀岡市を離れました。事故さえなければ今も幸せに暮らしていたはずなのに…。独りになると心が沈んで、『娘のもとへ逝きたい』と思ってしまう」(中江さん)

 中江さんは危険運転致死傷罪が見送られたのちも、他の遺族とともに危険運転の厳罰化を望む署名活動を続けた。結果、無免許で人身事故を起こした場合の罰則を重くする「自動車運転死傷行為処罰法」が2014年に成立している。

 亀岡市の事故で次女の真緒ちゃん(当時7才)を亡くした小谷真樹さん(35才)は、今回の東名高速事故についてこう語る。

「石橋容疑者の運転は、危険運転致死傷罪の構成要件である『妨害行為』そのものでしょう。最初の報道を見て、完全にこれに該当すると思ったのに、なぜ過失運転致死傷罪での逮捕なのか。高速道路であおり運転をして進路を妨害し、追い越し車線に無理矢理停止させている。誰がどう考えたって、追突の危険性は明白です。直接ぶつかったかどうかではなく、事故の原因を作ったかどうか、という点で判断されるべきだと思います」

 小谷さんもまた、事故から今日まで、時間が凍り付いたままである。

「この5年間、穏やかな気持ちになることが一度もありません。娘を亡くした喪失感は少しも埋まることがない。5年前に戻してほしい、毎日そう思っている自分がいます。東名高速事故のような危険運転は全国各地でいまだに起きています。こういうニュースが報じられるたびに、当時を思い出し、絶望感で押しつぶされそうになる。私たちの事件はなんの教訓にもなっていないのか、と…」

 中江さんもこう話す。

「この事故で危険運転致死傷罪を適用できなかったら、何のために新しい法律ができたかわかりません。法律が被害者に寄り添わず、ぼくらみたいな悔しい思いをする遺族が増えることが心苦しいです。今回の事故はぼくらとしても見守りたいし、可能であれば傍聴にも行きたいと思っています」

※女性セブン2017年11月2日号

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